2024年5月7日

料理にわざわざ日本酒を入れてアルコールを飛ばすのは無駄ではないか、という言説を見かけた。料理にアルコールを入れて加熱してアルコールを飛ばす理由について、教科書的な回答としては「共沸効果により臭い消しなどをするため」などがあると思われるが、個人的には「料理に欲しいのは旨味成分などだが、嫌気的環境による発酵過程でアルコールができてしまい、わざわざそれを取り除くのが面倒だし、アルコールのおかげで保存が効くようになるから」という理由だと思っていた。

で、「そういえば味の素のグルタミン酸ナトリウムも発酵で作っているな。副産物のアルコールどうしているんだろ?」と調べてみたら、グルタミン酸発酵はアルコールができないそうだ。

調べたら、この資料が面白かった。

調味料(アミノ酸発酵)と微生物 森永康

そもそもグルタミン酸は生物に必要な物質であるから、作られてしまったら細胞外に出してくれない。なので、最初は塩酸などを用いた抽出法を使っていた(合成法)。しかし、スケールしない問題や、副産物の処理の問題などがあり、発酵を用いた手法が提案される。最初はグルタミン酸の前駆体である2-オクソグルタル酸を作ってからグルタミン酸を作るという二段発酵法ができた。その後、微生物に細胞外にグルタミン酸を作らせる直接発酵法が完成する。このメカニズムが面白い。本来、グルタミン酸は生育に必要であるため、よほど高濃度にならない限り細胞外には排出されない。ところが、ビタミンの一種であるビオチンを制限した環境で生育すると、細胞膜が不完全となるため、グルタミン酸が外に出てしまう。さて、安くグルタミン酸を作るには、安い材料であるサトウキビや甜菜を使いたいが、これらには高濃度にビオチンが含まれるため、このままではうまくいかなない。そこで、細胞壁阻害剤を入れることでグルタミン酸が生産可能になる。要するに細胞壁を不完全にして、せっかく作ったグルタミン酸を外に出してしまえばよいのだから、最初から細胞壁が不完全な株を作ればよいことになる。そこで味の素と東工大が阻害剤無添加かつビオチン含有培地でもグルタミン酸を生産可能な変異株について研究が行われ、結局、グルタミン酸の排出チャネルが壊れていて常時開きっぱなしだからグルタミン酸が外に出てくる、という仕組みが解明された。

原著論文はこれっぽいな。

Mutations of the Corynebacterium glutamicum NCgl1221 Gene, Encoding a Mechanosensitive Channel Homolog, Induce l-Glutamic Acid Production

GWで頭がボケているなか査読が2つ降ってきた上に明日学会の座長とかで混乱している。なにから手をつけてよいかわからない状態。

学会の確認。明日は第194回HPC研究発表会@東工大ずすかけ台キャンパス。おそらくすずかけ台キャンパスは初めて。朝イチのセッションの座長なのでZoomのセッティング確認もやるらしい。最寄り駅は田園都市線か。前回は電通大で、調布と田園調布を間違えるというミスをしたので、今度は遅刻しないようにしないと。

査読の一つがSciPost。こちらは査読者がオープンな状態での査読(希望すれば匿名にもできる)。

とりあえず査読者によるコメントと返事がこちら。完全オープン。

昔、ちょっと「うーん」と思う雑誌がこの方式を採用していたので、あまり良い印象はなかったのだが、信頼できる知り合いがここに論文をpublishしていたので、まともっぽい。少なくともやたらめったら特集号を計画して論文を投稿しろだのゲストエディタになれだのといったお誘いメールはSciPostから来たことがない。

問題は、「やたらめったら特集号を計画して論文を投稿しろだのゲストエディタになれだのといったお誘いメール」を送ってくる(predatory仕草)が、査読プロセスはオープンな雑誌。判断にこまる。

もう一つの査読、Regular Articleなのに査読受諾から8日でレポート返せって無茶だろ。しかも査読システムに入ろうとしたら、Diversityアンケートとかで性別人種を入力しないと次に進めないという仕様(スキップ不可)。なにこれ?次から査読引き受けるのやめよう。