はじめに

物理とは、極言すれば現象をあらわす偏微分方程式(支配方程式と呼ばれる)を考え、それを解く学問である。このとき、方程式の多くは非線形となるだろう。非線形方程式は特別な場合を除いて解くことは出来ず、さらに近似を行うことで物事の本質を調べる必要がある。この「近似」も物理の大きな特徴の一つである。近似しなければ方程式を解くことは出来ず、近似が粗すぎれば何も予言能力のない結果しか得られない。したがって、近似を行う際には何が物事の本質かを考えながら問題に取り組む必要がある。

物理では道具として数学の言葉を使うが、物理数学は数学とは異なる。計算の結果得られる結果にはすべて意味がある。たとえばエネルギー効率が1.0を超えるような結果が得られたとしたら、何か間違っているはずである。また、ピッチャーの投げる球が音速を超えるなどしたら、やはりどこかに考え違いがあるはずだ1。自分が何を求めようとして、何をやっているのかを常に考えながら問題を解く癖をつけてもらいたい。

本講義は、名古屋大学大学院情報科学研究科複雑系科学専攻多自由度システム情報論講座(当時)において実施されたものです。ご協力いただいた杉山先生、松尾先生、森先生、中村先生に感謝いたします。なお、本講義ノートに誤りなどがあれば全て筆者の責任です。


  1. これらの例は、いずれもテストで本当にやった学生がいる。そうならないように気をつけて欲しい。