第三回 基底と固有値問題

1.

行列\(A\)とベクトル\(\vec{x}\)について、\(A \vec{x} = \lambda \vec{x}\)が成り立つとき、\(\vec{x}\)\(A\)の固有ベクトル、\(\lambda\)を固有値と呼ぶ。

以下の行列について以下の問いに答えよ。

\[ A = \left( \begin{array}{cc} 1 & -2 \\ -2 & 1 \end{array} \right) \]

(1)

行列の固有値、及び対応する規格化された固有ベクトルを求めよ。ここで求められた固有ベクトルは互いに直交しているか確認せよ。

(2)

前問で求めた固有ベクトルをそれぞれ\(\vec{e}_1,\vec{e}_2\)とする。 ベクトル

\[ \vec{a} = \displaystyle \left( \begin{array}{c} 3 \\ 4 \end{array} \right) \]

を、

\[ \vec{a} = c_1 \vec{e}_1 +c_2 \vec{e}_2 \]

と展開することを考える。\(c_1, c_2\)を求めよ。

(3)

得られた固有ベクトルを用いて行列\(A\)を対角化せよ。 その結果を用いて\(A^n\)を求めよ。

2.

ハミルトニアン\(\mathcal H\)に対し、関数\(\psi\)\({\mathcal H}\psi = E \psi\)を満たすとき、\(\psi\)を波動関数、\(E\)をエネルギー固有値という。この波動関数とエネルギー固有値を求める問題も固有値問題と呼ぶ。固有値問題の例として、時間を含まない一次元シュレーディンガー方程式、

\[ \left( -\frac{\hbar^2}{2m} \frac{\mathrm{d}^2}{\mathrm{d} x^2} + V(x) \right) \psi = E \psi \]

を考えよう。\(V(x)\)はポテンシャルを表す。\(m\)\(\hbar\)\(E\)は いずれも正の実数とする。

(1)

ポテンシャル\(V(x)=0\)の場合、\(\psi(x)\)の一般解を求めよ。

(2)

一次元\(-L/2< x < L/2\)の範囲で自由に運動する粒子が従う 規格化された波動関数\(\psi\)を求めよ。また、対応するエネルギー固有値も求めよ。

(3)

前問で求めた波動関数について、異なるエネルギー固有値に対応する波動関数が互いに直交することを示せ。

3.

前問のポテンシャルとして、\(V(x) = m \omega^2 x^2/2\)を考える。これは原点からの距離の二乗でエネルギーが高くなる、調和振動子を表している。この系について以下の問いに答えよ。

(1)

基底状態の波動関数を\(\psi_0(x) = N_0 \exp{(-a^2 x^2/2)}\)とおいて代入し、これが解であることと規格化条件から\(a\)\(E\)\(N_0\)を求めよ。

(2)

この方程式の一般解は Hermiteの多項式 \(H_n(x)\)を用いて

\[ \psi_n(x) = N_n H_n(ax) \exp{(-a^2 x^2/2)} \]

と表すことができる。\(H_n(ax)\)の満たすべき微分方程式を求めよ。(ヒント: \(ax \rightarrow \xi\)と変数変換し、前問で求めた\(a\)を代入すると微分方程式が簡単な形になる)

(3)

Hermiteの多項式は、具体的には\(H_0 = 1\)\(H_1 = 2x\)\(H_2 = 4x^2-2\)である。\(\psi_0(x)\)\(\psi_1(x)\)\(\psi_2(x)\)がそれぞれ直交していることを 確かめよ。