第六回 複素積分とローラン展開
1.
複素関数\(f(z)\)が点\(z_0\)で微分可能であるとは、\(\lim z \rightarrow z_0\)へどのように近づいても極限
\[ \lim_{\Delta z \rightarrow 0} \frac{f(z+\Delta z) - f(z)}{\Delta z} \]
が同じ値に定まることである(ただし\(\Delta z = z - z_0\))。このとき、複素関数の微分について以下の問に答えよ。ただし、複素数\(z\)を二つの実数を用いて\(z = x + iy\)と、複素関数\(f(z)\)を、二つの実数関数を用いて\(f(z) = u(x,y) + i v(x,y)\)と表す。
(1)
\(f(z)\)が微分可能であるとき、\(u(x,y)\)と\(v(x,y)\)が、以下の関係式
\[ \frac{\partial u}{\partial x} = \frac{\partial v}{\partial y}, \frac{\partial u}{\partial y} = -\frac{\partial v}{\partial x}, \]
を満たすことを示せ。 この関係式をコーシー・リーマン(Cauchy-Riemann)の関係式という。
(2)
複素関数\(f(z) = z^2\)はコーシー・リーマンの関係式が成り立つか確認せよ。
(3)
複素関数\(f(z) = z \bar{z}\)はコーシー・リーマンの関係式を満たすか確認せよ。 ただし\(\bar{z}\)は\(z\)の複素共役を表す。
2.
複素関数が\(f(t) = u(t) + i v(t)\)とパラメータ\(t\)で表示されるとき、\(f(t)\)の区間\([a,b]\)での定積分を
\[ \int_a^b f(t) \mathrm{d} t = \int_a^b u(t)\mathrm{d} t + i \int_a^b v(t) \mathrm{d} t \]
で定義する。このとき、以下の積分を求めよ。ただし、括弧内は積分区間である。
(1)
\(f(z) = z^2\) (原点\(0\)から点\(1+i\)にいたる線分)
(2)
\(f(z) = (z-a)^n ~(n = 0,\pm 1, \pm 2,\cdots)\) (点\(a\)を中心とする半径\(r (>0)\)の円周上を反時計周りに一周)。
3.
関数\(f(z)\)が領域\(D\)において微分可能であるとき、関数\(f(z)\)は\(D\)において正則であるという。点\(a\)が\(f(z)\)の孤立特異点であり、\(f(z)が\)領域\(D = \{ z | r_1 < |z-a| <r_2 \}\)において正則であるとき、 \(f(z)\)は点\(a\)の周りで
\[ f(z) = \sum_{-\infty}^{\infty} c_n (z-a)^n \]
と展開される。これを\(f(x)\)の\(a\)におけるローラン(Laurent)展開と呼ぶ。このとき、以下の問に答えよ。
ヒント:収束半径\((|z|<1)\)に注意して以下の展開を利用せよ。
\[ \frac{1}{1+z} = 1-z+z^2-\cdots + (-1)^n z^n + \cdots \]
(1)
\(f(z) = \displaystyle\frac{1}{z-1}\)を原点を中心とし、\(|z|<1\)及び\(1<|z|\)のそれぞれの 場合についてローラン展開せよ。
(2)
\(f(z) = \displaystyle\frac{1}{z(z-1)}\)を原点を中心とし、\(|z|<1\)及び\(1<|z|\)のそれぞれの 場合についてローラン展開せよ。