おわりに

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ニュートンの運動方程式から始めて、量子力学に至るまで、解析力学を一通り学んだ。この講義ノートの想定読者である大学生にアドバイスをしておきたい。解析力学の理解は難しい。量子力学も電磁気学も、熱力学も統計力学も簡単に学べる学問ではない。しかし、すらすら問題を解いている同期の姿を見て、さっぱり理解できない自分を鑑み、頭が悪いのかも、と落ち込む必要は全くない。そもそも難しい学問であるから、教科書を読んでわからないのは当然である。問題を解ける能力と、学問を理解するということは別の問題である。

著者が「なんとなくわかってきたかな」と思ったのは、講義で教えるようになってからであり、その時初めて自分が学生の頃はさっぱり理解していなかったことがわかった。つまり、学生の頃は自分が理解していないことすら理解できていなかった。大学を卒業してから真面目に勉強をして、ようやくいろんなことがつながって来たように思う。

解析力学に限らず、数式がたくさん出てくる難しい学問を学ぶと、「どうしてこんなものを学ばなければならないのか」という気持ちになるであろう。実生活で解析力学が役に立つことなど無いのでなおさらである。それでも、学生の皆さんには解析力学という美しい学問を学んで欲しい。「時間発展とは要するに回転であり、回転とは座標変換であり、ハミルトニアンはその座標変換の母関数である」という文章をなんとなく理解できた時、あなたの視野は一段広がることであろう。

もちろん学問は役に立つ。しかし、役に立つ、立たないだけでなく、学ぶことで広がる世界を感じ取って欲しい。本書がその一助となれば幸いである。