より深く学ぶために
教科書の読み方
解析力学を学ぶためには、教科書を読むと良い。何を当たり前のことを、思うかもしれないが、今はネット上に多数の優れた解説がある。YouTubeでも優れた講義が聴講可能である。「重い」教科書を避け、これらをつまみぐいすることで理解したい、という気持ちはよく分かる。しかし、それでも教科書を読むのが良い。「わかりやすい解説」は、必ずしも「優れた解説」ではない。ネットでのつまみ食いでは、理解の難しいところを「わかった気持ち」で逃げてしまう誘惑に耐えるのは難しい。本気で学ぶのなら評判の良い教科書を購入して読んだほうが結局は近道である。なお、教科書はそれなりの値段ではあるが、できれば書店や図書館などでざっと中身をチェックしてから、どれか一つ購入して読み通すと良い。
もしざっとその分野を概観したいだけであれば、まずなるべく短めの教科書を読み通すのが良い。本には相性がある。読んでいて苦痛であれば、その本はあなたに合っていない。諦めて別の本を試すべきである。もしどの本を読んでもピンとこないようであれば、あなたはまだその分野を学ぶ準備ができていない。例えば解析力学であれば、その前のニュートン力学や、数学の知識がある程度必要である。教科書で省略されている式変形を自分で埋められるようになってからまたトライすると良い。
もしあなたがこの分野をそれなりに学びたいのであれば、二冊以上の教科書を読むと良い。解析力学、熱力学、統計力学、量子力学といった基礎的な分野は、理論としてある程度完成されている。しかし、その完成された学問が書き手によってこんなにも異なる形で表現されるのかと驚くことであろう。複数の教科書を完全に読み通すのはもちろん手間も時間もかかるが、視野が非常に広がるのて強く勧めたい。
参考文献
世の中には優れた参考書が多数あり、そのすべてを紹介することはできないが、本講義ノートを執筆するにあたって参考にした書籍を紹介する。
初学者向け
- 「力学 I(新装版)-質点・剛体の力学」「力学II(新装版) 解析力学」、原島鮮、裳華房
標準的な教科書。平易な文章で記述してあり、初学者は、まずこの本から学び始めるのが良いであろう。
- 「よくわかる解析力学」前野昌宏、東京図書
抽象的な説明になりがちな解析力学において、なるべく直感的な説明を与えている本。本講義ノートの執筆にあたって参考にした箇所が多い。
量子力学への接続向け
- 「解析力学・量子論」 須藤靖、東京大学出版会
解析力学を学ぶ動機として、量子力学に現れるハミルトニアン等を理解しておきたいから、という人も多いだろう。この本は、一冊で解析力学から量子力学まで一気に学ぶことができる。議論展開も明快であり読みやすい。
- 「量子力学を学ぶための解析力学入門 (増補第2版)」、高橋康、講談社サイエンティフィク
解析力学から量子力学への最短距離を進む本。語り口が平易で読みやすい。ハミルトニアンの意味、そして量子力学において果たす役割が記述されている。ページ数も少なく、短時間で読み通せるのも良い。
より深く学ぶために
- 「解析力学 I」「解析力学 II」, 山本 義隆・中村 孔一(著)、朝倉物理学大系、朝倉書店
個人的なバイブル。内容は高度であり、初学者が最初に読む本としておすすめはできない。しかし、解析力学という学問体系の美しさを余すところなく記述した書籍であり、もし読み通すことができれば必ず人生の財産となるであろう。